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人身供物の村娘

第3章 干し芋

(干し芋かぁ)
そんなことを空いた皿を洗いながら考えていた。

干し芋は、貧しい暮らしの菊理にとって、おやつでもありご飯となる時もあった。
それを作っていたのが祖父にあたる、源蔵であった。

贄として決まってからは、それを食べさせるのは失礼だと思ったのか、食べれなくなり
寂しいとも思うくらい、源蔵お手製の干し芋が菊理は大好きだった。

作り方も習っていたから、黒狐のために
自分の思い出のために、菊理は黒狐に作って出そうと思った。

「芋って、どこで取れるんだろう…。」
そうである。
源蔵の時は源蔵が畑をしていたためにできた干し芋。
ここではそうもいかないから、干し芋のための芋を自分で森に行って探さなくては行けない。

「黒狐様。」
何やら書物を読む、黒狐にこえをかける。

「なんだ。」
ふと目線を少しやってまた目線を書物に戻しながら黒狐は聞いた。

「少し森に芋を探しに行ってもよろしいでしょうか?」
そう聞くと、あまり遠くへ行くなと告げられたのみで反対はされなかった。

「分かりました。
夕刻までには帰ります。」
そう言ってカゴを持ち、菊理は森へ出かけた。

まさか、これが菊理に訪れる最大の恐怖とも知らずに。

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