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私淫らに堕ちます

第9章 変化

「圭介〜。スマホ見てニヤニヤして何のエロ画像だ。見してみろよ。」
 誰もいない武道館の前でスマホを食い入るように見ている啓介を見つけ、からかってやろうと後ろから声をかけた。エロ画像なら盛大にからかってやろう。

「違ぇーーよ。見るなよ。あっ。」
スマホの画面に映っていたのは……

「これ…栞先生じゃん。隠し撮りか?」

 先生がなんだか物憂げに外を眺めている姿が、美しく映っていた。なんだろう、このムカムカする感情は。

 先生は、まだ誰のものでもないのに、まるで自分の彼女を隠し撮りされたような気になって、腹が立った。いや、写真ぐらいで怒るのは心が狭い。心を無理矢理落ち着かせる。

「栞先生、綺麗だよな。オレ好きなんだよ。この間本人から聞いたけど、彼氏いないんだろう?オレ立候補しようかな。」

 うっとりながら見つめる圭介に「ふざける」とも「栞はオレの女だ」とも言えず、かといって「頑張れよ」なんて口が裂けても言えない。これが嫉妬というものか。そうなんだろうな。初めての経験に戸惑いが大きい。口から出たのが、

「う〜ん、あれだけ素敵な人だから、本当は彼氏がいるんじゃないか。」

という諦めさせる言葉だった。まさかこんな身近に先生のことを好きでいる男がいたなんて思いもしなかった。

 もしかしたら、自分が気付かないだけで、本当は今でさえ他の男から迫られているかと思うと焦りのような気持ちさえ出てくる。

「そうかな〜。まぁ、そのときはその時よ。当たって砕けろさ。」
圭介ののこういう前向きなところは、いつ聞いても気持ちがいい。ただ、先生のことでなければだが…。

 ふと先生のことを思い浮かべる。今年になってから先生のことを考えることが日に日に多くなってきた。気を緩めるとつい彼女のことを考えてしまう。それだけ自分にとって、大事な人なんだと思う。それまでは、研究さえできていれば何も要らなかったのに変われば変わるもんだ。

 さて、圭佑のことはともかく、自分もこれからどうしたらいいだろうか。まだまだ容赦なく照らす太陽に手をかざしながら、先のことに思いを馳せるのだった。

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