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私淫らに堕ちます

第9章 変化

 職員会議での検討がスムーズに進み、最後に学園長の話となった。日頃は気難しく、威厳あることが学園長の仕事とばかりに威張り散らしているのだが、今はよほどいいことがあったのだろう。ニコニコとして、職員全員を見渡して勿体つけながら話し始めた。

「最近我が校の難関校の進学実績が評価されています。これも私の基本方針に従って、皆さんが全力で取り組んでいる成果だと考えています。」

どうやら学園の評価が上がっていることが学園長の機嫌の良さの原因らしい。それも、聞いていると自分が上げてやっているのだという風にも聞こえなくない。

「さて、今年は、やや早いですが、本校からアメリカの名門大学へ進路が決定した生徒が出ました。しかも飛び級での入学で、本校始まって以来の快挙です。その生徒の名前は、2年相馬春樹君です。彼は、飛び抜けて優秀な成績を誇っていましたが、まさか進学先がアメリカとは、昨今のグルーバル化も高校まで…。」

 学園長の話を自慢の一種のように聞いていた栞にとって衝撃的な話だった。春樹がまさかアメリカの大学に入学する。

 しかも、1月からというあまりにも急な話だった。頭の中が真っ白になり、それから後の学園長の話はほとんど入ってこなかった。

(アメリカへ行くなんて素振りは少しもなかったのに…。)

職員会議が終わっても、ざわざわと騒ぎが収まらなかった。

「まさかうちの学校から飛び級の天才が現れるとはね。学園長も鼻が高いだろうよ。担任の高山南くん。相馬春樹はいつから向こうへ行くのかね。確かアメリカは、日本と入学時期が違うんだろう?」

学年主任の棟方先生の大きな声が響いた。みんなも興味あるのか、一斉に南先生へ視線を向けた。

「1月からの入学予定です。入学準備もありますし、先に研究したいこともあるそうで、来月には出発するそうです。」

「それはまた急だね。彼は人気者だから、生徒達も寂しがるでしょうな。」

「本当に。アメリカに行くとしても、3年までは高校生活を送らせてあげたかったですね。」

先生の寂しげな声がいつまでも耳に残った。
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