蜜と獄 〜甘く壊して〜
第6章 【あなたに壊されたい】
「了解っす、でも何かあればすぐに言ってくださいね?接客中でもストップかけてくれたら飛んで入りますんで」
「ありがとう」
軽く深呼吸して部屋を出た。
頭がズキズキ痛む。
本当はかなり動揺してる。
此処を突き止められた事。
誰にもバレずにやれてこれたのに。
堤さんに相談する?
バレたから辞めますって?
1ヶ月先まで指名入ってるのにお店に迷惑をかける訳にはいかない。
でも雲隠れする事も出来ない。
だったら、今の私に出来る事を全うしなければ。
今日、明日は新店舗視察との事で堤さんは居ない。
これは、思いつきでも気が動転していた訳でもないの。
いつかはこんな日が来るんじゃないかと密かに心の隅に置いていた事。
迷う事なく私はある部屋を訪れノックした。
何もかも一人で決めてごめんなさい。
あなたが一番嫌う事だとわかっていても私はせざるを得なかった。
わかってくださいと言っても怒り狂うでしょうね。
神楽坂と決着を着ける時が来てしまったようです。
どうか、私個人の想いを汲み取って頂けないでしょうか。
何事も揉めることなく穏便に済ませられるよう切に願います。
「バカヤロウ!」と今にも怒号が聴こえてきそう。
だって私がもし堤さんの立場なら同じ事を思うはずです。
こんな女、くたばっちまえって思うでしょう?
お前なんか嫌いだ、
二度と目の前に現れるな。
いつその口がそう言うのかとハラハラしながらも私は、自分の責任を果たします。
あの探偵が現れてからというものの、怒涛の日々が過ぎ去っていきました。
案の定、義理の母親、神楽坂雪江は私の自宅前に姿を見せた。
6年ぶり…だろうか。
最後に見た時とは印象が違って見えて一瞬誰だかわからなかったけれど、開口一番の声ですぐに察知出来た。
歳は重ねても有り余るお金で整形でもした?
目は吊り上がっていて人相まで変わっている。
そしてその開口一番が
「この恥晒し!二度と神楽坂の姓を名乗るな!」だった。
おまけに強烈なビンタまでお見舞いされて。
「ハハ……6年ぶりに会った娘に言う事ですか?」
「お前なんか娘じゃない!虫唾がはしる!」