蜜と獄 〜甘く壊して〜
第6章 【あなたに壊されたい】
「もうそろそろその敬語やめろよ」
「え?無理です……まだお返事してないので」
「OKなら敬語ナシな?」
「……わかりました」
「そっかそっか〜」ってご機嫌そう。
腕枕しながらギュッと抱かれる。
此処が……居場所だった。
居場所を作ってくれたんだ。
雛鳥と一緒で、いつかは羽ばたいて行かなきゃならない。
独り立ちしないと。
ずっと人に頼らない人生を送ってきたから前の自分に戻るだけ。
容易い事じゃないのもわかっているけど。
踏み出すなら、今なんだ。
先に見送って、夕方には出勤する。
リリカになりきって今ある精一杯を出し尽くしてNo.1の接客をするの。
「本当に卒業しちゃうの?寂しいな……もう次は会えないんだね」
「んふふ、そうですね……すみません、普通の生活に戻ります」
「借金してたの?もう返済目処が立ったとか?」
「はい、よくわかりましたね?ていうか期間限定でしたしそういう理由の子はたくさん居ますからね」
「じゃ、その期間内でNo.1取れたの凄いよ、伝説になるんじゃない?」
「アハハ、大袈裟ですよ、もっと素晴らしいキャストはうちにたくさん居ますのでこれからも通ってくださいね?」
「うぅ……リリカロス決定だな」
「わぁ、そう言って頂いて光栄です、サービスしちゃいますね」
最後のお客様には唾液手コキと頬キス、ハグで持て成す。
かなり悦んで頂きました。
「本当に普通の生活戻れるの〜?出戻り大歓迎だからね?戻って来たら絶対に連絡頂戴ね?すぐ指名予約入れるから」
「ふふふ、ありがとうございます」
「じゃ、何処かで普通にOLしてたりするのかな?すれ違ってたりしたらドキドキするなぁ」
「あ、リリカだってわかってもそっとしておいてくださいね?」と仮面を強調する。
「最後にお顔見たかったなぁ〜」
「ダメですってば」
笑い合いながらもそっと手を握られ見つめる。
「この手、覚えておくよ……握手したらわかるように」
「え、緊張しちゃうな……本当何処かで会ってそうだもん」
きっと会わないだろうけど夢は壊すといけないので。
最後まで乗るのが鉄則。