テキストサイズ

蜜と獄 〜甘く壊して〜

第7章 【決断の時】






一瞬で呑み込まれそうになるも、腰にある“龍”に触れて正気を取り戻した。
お辞儀した後、目の前で赤のたすきで縛り早速披露し始める。




穏やかなクラシックが会場を包み、私たちは各々定位置に着き筆を握った。




私が披露した文字は“龍翔鳳舞”




“りゅうしょうほうぶ”と読んで、
龍のごとく力強く駆け上がり、 鳳凰のように華麗に舞う…という意味合いだ。
たくさんのトップ企業が集まるということで私の好きな言葉が真っ先に思い付いたのだ。




大好きな“龍”という文字は必ず入れたかった。
エレンたちも絶賛してくれたし、私の想像以上の素敵な龍と鳳凰の絵も文字の周りに描いてくれている。




時折「おぉ…」という歓声も肌で感じながら頂いた時間内で作品の仕上げにも取り掛かった。
それぞれのサインと私は自分で彫って作った大きな名前の判子を最後に押した。




「ブラボー!」とスタンディングオベーションの大盛況で幕を閉じました。




表彰式が終わっても写真を撮る列が出来ていた。
私たちパフォーマーも一緒に写真撮影させて頂いたり、個人でもツーショット撮影を余儀なくされている。
袴にも皆、興味津々だ。




これは新聞や雑誌、その日のニュースなんかにも取り上げられ一躍有名人になってしまう。
書道家アーティストとしての“サエ・キヌガワ”の名前がまさかSNSでバズってしまうとは誰も想像出来なかった。




まだ世間に知られるほんの少し前。




とある公園で、だだっ広い芝生の上にて設置した白の台紙。
縦2メートル、横2メートルの正方形型に筆を走らせる。
大きな一文字“魂”と書道パフォーマンスを繰り広げていた。




少し跳ねてしまった書道液。
その日は白のTシャツに白のオーバーオール。
汚れるとわかっていながらこの大胆さ。
つなぎの腰巻きでキャップ帽というラフな格好でいかつい書道ってのがギャップがあって良いかなって。
服にも最後は頬にもちょっと飛んじゃったけど楽しく書けた。





それをスマホで撮影している人や集まってきた子供たちに新しい台紙に「好きに書いていいよ」と筆を渡すとたちまち人集りが。
駆けつけたエレンたちも加わって絵を書いたり字を教えたり。




言葉の壁を越えて伝わるアートって本当に“魂”が宿ってひとつになれた気がするの。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ