蜜と獄 〜甘く壊して〜
第7章 【決断の時】
「前に言った私の忘れられない人ね、その人も同じ龍が背中にあった……コレよりもっと凄いのがね……もう忘れずに生きていくって決めたの、彼を愛した事を一生忘れないって誓い」
「女の私でも惚れるわ、サエ」
「やだ、エレン、私は男にしか興味ないけどな」
冗談を言い合って笑える仲間が居る。
それがどんなに私を救って強くしてくれるか。
ちゃんと胸張って生きてるよっていつか伝えることが出来たら嬉しいな。
日に日に刺青は濃くなってきている気がする。
何だかあなたに守られているようで力が漲るの。
不思議ね、もう会えないとわかっているのにあなたの手が触れている錯覚さえ起こるのよ。
練習用で書いた文字。
エレンたちも出来栄えに興奮してくれている。
一緒に飾る絵も素晴らしい作品となり完成している。
後は会場で本番を迎えるのみだ。
主催者側との念入りな打ち合わせと実際に会場へ足を運んで雰囲気を掴む。
「え………コレ………凄いね、ここ全部に人入るんでしょ?」
「やっと理解出来た?サエ」
顔面蒼白しているところに正式に書かせて頂く台紙のサイズが若干変光になりもうワンサイズ大きめになった。
縦4メートル、横6メートルの黒の台紙に私は黄色のカラー書道液で挑戦する。
そして私の字を周りで彩ってくれるエレンとデュークの絵。
筆の太さや質にもかなりこだわった。
特大太筆でも重さを削りに削ったオーダー品。
普通ならこの台紙の大きさでは筆モップを使うのが主流だが私はもう少し短めの小回りが利く太筆。
同じく絵画の方でも同じ筆を使う事になり筆質を何度も確認して調整してもらう。
そして、衣装合わせ。
こんな時こそ着なければならないでしょ。
届いた瞬間興奮MAXなエレンたち。
こういうの、珍しいよね。
そう、私たちは本番当日、パフォーマンス用の袴を着る。
私は白と紺で、エレンは白とピンク、デュークは紺とグレーの袴だ。
それぞれ赤のたすきで結んで作品に挑む。
細かいところまで念入りに練習を重ね、ついに本番を迎えた。
その場で発表される文字。
会場にいる誰もが台紙に注目していた。
たくさんの拍手を浴びて袴姿で登場した私たち。
夢にまで見た舞台に今、自分の足で立ってる事に手が震える。