蜜と獄 〜甘く壊して〜
第2章 【快楽主義の射精術】
「何だ、そんなことか、なら大丈夫だな」
「え……?」
「慣れるよそのうち、同棲なんてそんなもんだろ」
「慣れません、一生」
「お前、意外と頭カタイよな」
「どうとでも……」
「拗ねるなよ、可愛いしか思わねぇよ」
この関係、続けるべきでしょうか。
正直、わかりません。
流されているのだけはわかるけど。
濁流に呑み込まれて辿り着く場所などひとつも想像出来ない。
片脚だけ突っ込んだ夜の世界。
どっぷりハマるには覚悟が足りない。
中途半端なままあなたのぬるま湯につかるのだけは避けたいのに。
立ち上がるにも脚にまだ力が入らない。
笑うあなたの腕を弱く叩いた。
「悪い、ちょっとやり過ぎた……紗衣が目の前に居ると抑え効かねぇんだ」
「それ、困ります……非常に」
「朝から襲ってきたくせに」
「そ、それは…っ」
またキスで言葉を遮る。
そういうところも困るんです!
近くにあったクッションも投げつけてやっと立てた脚で着替えに行く。
「食べててください、出掛ける準備しますから」
「外で仕事か?」
「はい、打ち合わせです」
軽い会話をして着替えた後に化粧をし、髪を巻いた。
ノックがしたので開けると堤さんは固まっている。
「あの、どうかされました?」
目だけがつま先まで下りてって顔に戻る。
あぁ、そうか。
オンオフの完全オンな時の私だから。
ンフフ、見惚れちゃいましたか?
黒の半袖ニットの切り替えワンピースで白地スカートは黒のデザインが散りばめられていてウエストリボンでかなり着痩せ効果のある余所行きコーデだ。
アクセサリーもシンプルなものを選んだつもり。
速乾出来る赤いネイルにも気付いたようで。
何も言わずに部屋に入って来た。
この家に2人きりなのにちゃんとドアも閉めて。
「打ち合わせって男かよ」
「え………はい」
「だからオシャレしてんだ?」
「いえ、最低限の身だしなみかと」
「俺にはそう見えない」
着替えや化粧台があるのは勿論寝室なわけで。
ベットにまで詰め寄られ座ってしまう。