蜜と獄 〜甘く壊して〜
第3章 【秘密裏な罠と罰】
本人曰く、良くある肩がぶつかったとイチャモンをつけられて気が立っていたから睨みつけたら喧嘩に発展したそうで、殴られたから殴り返したとのこと。
結局相手が6人居た為袋叩きに。
第三者の目撃情報と照らし合わせ、防犯カメラやSNS等で事件の一部始終が上がっていないかを確認し捜査するとのこと。
相手側と面識はなかったみたい。
このご時世、すぐに特定して逮捕に至るだろうと堤さんも言っていた。
とにかく、彼が無事で良かった。
固定されて動けないのに何度も泣きながら堤さんと私に謝罪する。
「もう良いから今はゆっくりしてろ、治療費も労災扱いするから心配するな」
「え…!?でも俺もう…」
「バーカ、辞めてねぇよ、半年はそのままにしておこうと思ってた、戻る事も考えてな」
「堤さん……俺…っ」
「泣くな、痛むだろ」
ボーイさんや従業員、勿論キャストもだけどクレーマーから身を護る為に暴行や怪我をした時の為に“業務災害”という労災がある。
それは第三者からの暴行でも認定される。
「リリカさんもありがとうございました」
「傷の腫れ、早く引くと良いね……イケメンが台無しだよ」
少し笑った顔が寂しげに映る。
「もう無茶したらダメだからね」と抱き締める。
気付いたら私も泣いてて。
目の前で血を流して倒れていたらどんなに冷静を装っても心臓はバクバクで動揺する。
もう二度としないで……命だけは守って。
「キミの代わりは居ないのよ?」
「はい……」
「後は宜しくお願いします」
堤さんにそう頭を下げて出て行こうとした。
「送る」と言われたが病院ならすぐにタクシーが呼べるので後のことは任せた。
「何か必要な事があれば仰ってください、出勤前に寄りますよ?」
「ありがとう、俺も退院までは来るつもりだから」
少し俯いたから自然と手が伸びて頬に触れてしまった。
タクシーを待つまでのほんの僅かな時間で動揺させてしまう。
「限界感じたら遠慮せず頼ってください、ボスが倒れたら元も子もないので」
フッと優しく笑って頭を撫でられた。
久しぶりに感じる堤さんの温もり。