蜜と獄 〜甘く壊して〜
第3章 【秘密裏な罠と罰】
事態は急展開。
人生はいつ何処でどう転ぶかはわからない。
昨日と今じゃ180度変わっていたりする。
明日はもっと…かも知れない。
夜の街。
いつもようにタクシーに乗って帰宅途中で信号待ちに引っ掛かった時。
「あ〜喧嘩ですかね、可哀想に」
運転手さんがそう言うから見ている同じ方向に目を向けた。
次の瞬間「此処で降ります」とお金を払い降車していた。
お釣りも受け取らず飛び出した私は迷う事なくその群れに。
「何してるんですか!警察呼びましたけど!」
その一言に群れの多くは散っていく。
「コイツが最初に喧嘩売ってきたんだからな!」と捨て台詞を吐いて居なくなっていった。
携帯を取り出しその場で救急車を呼んだ。
額や鼻、口から血を流して座り込んでいる。
恐ろしくて周りも見て見ぬ振りか。
ハンカチを出し血を押さえながら呼びかける。
「何があったの、この前の怪我より酷くなってるじゃない……大丈夫?意識あるよね?」
「リリカさん……どうして?」
「タクシーから見えたから」
「すみません……」
「とりあえず治療してもらお?」
「いや……俺…」
「言う事聞いて、見捨てる選択肢はないの」
骨は折れてはないがヒビが入ってるとのことで検査入院となった。
後ほど警察も来て事情聴取され身元引受人を申し出た。
彼に家族は居なくて親とは絶縁状態だとその時知った。
バタバタと病院の廊下を走る足音。
「すみません、さっき運ばれてきた秋吉亮平は!?」
凄く焦っている声。
立ち上がった私と目が合って駆け寄ってきた。
「紗衣……連絡くれてありがとうな」
もう辞めた人間だから関係ないのはわかってる。
でも、呼ぶべきだと思った。
堤さんならこうして駆けつける、義理と人情だけは持って生まれた人だって信じていたから。
「怪我は!?アイツ大丈夫なんだよな!?」
珍しく動揺してて驚いているのとやっぱり痩せたなって思った。
主治医からも一緒に説明を受けて入院手続き、警察には被害届を提出した。