蜜と獄 〜甘く壊して〜
第3章 【秘密裏な罠と罰】
案の定そのまま抱き締めてきて固いモノが当たる。
シャワーヘッドを固定の位置に掛けて壁際で再び向かい合って唇を重ねてる。
なんて執拗な………なんて妖艶なキス。
嫌でも応えてしまう。
ううん、応えさせるのが上手い。
2人の身体にはシャワーがかかっていて浴室も程よく温まっていた。
堤さんの手が下に降りて濡れ加減を確認する。
指先が触れただけで「イヤッ…」と拒絶してしまった。
最後の悪あがき……させてください。
どうしていいかわからない顔で手を止める。
線引き思い出して。
約束……簡単に破らないで。
果たせそうにないって泣きそうな顔で言わないでよ。
「お前がトップに立つのは時間の問題だ、でも俺はとっくに限界越えてる……頭がおかしくなりそうだ……紗衣でしか埋めれねぇんだよ、俺を何とかしてくれ」
欲しいわよ………私だって。
今すぐどうにか出来るならとっくにやってる。
悔しい………悔しいよ、堤さん。
涙が溢れそうなので胸を借りる事にした。
頭を胸板に寄せて握りしめていた手首を更に強く握る。
バレないように拭ってシャワーを止めた。
「すみません、先に出ます」
目も合わせず浴室を出た。
身体を拭いてバスタオルで巻いた。
もうひとつのタオルを持って浴室に戻る。
今にも泣き出しそうな暗い顔した堤さんを頭から包んだ。
子どものように従って拭かれてる。
いつも着ていたガウンに2人腕を通して。
髪を乾かす間も無言のまま。
そっと手を取りベットまで誘う。
「紗衣……?」
「今夜は此処で寝てください、酷い顔してる……ずっと寝れてないんですよね?」
「紗衣も寝てくれる?」
「私は作業場で寝ます、ご心配なく」
「待って…!頼む……もう限界なんだ……お前が居ないと寝れない」
行かせまいと掴まれた手。
「いつからそんな子供じみた事を…?堤さんって私とひと回り以上離れてますよね?」
あの毅然とした態度の堤さんは何処に行ったの?
もっと忍耐強い人だと思ってた。
私なんかは到底足元にも及ばなくていつも余裕で鼻で笑うような人。
いくつも想像を絶する世界を魅せてくれていた人だったじゃないですか。