蜜と獄 〜甘く壊して〜
第5章 【絶頂地獄の成れの果て】
舌遣いで伝わってくる。
ギブ……ギブアップだよ。
立ってられなくなるから。
腰に来ちゃうキスはお店ではしないで。
トントンと胸を叩くのに一向に止める気配なし。
貪り食われてる。
ハァハァ……ハァハァ……ハァハァ………
もう支えて貰わないと立てないほど脚にもきてる。
「仮面外してんじゃねぇよ……見られたらどうすんだ」
昔は顔出ししないかって言ってたのに。
もうダメなんだね、堤さんの方が必死になってる。
それが嬉しくて堪らないけど、こういうことされるとこっちまでムラムラするから帰るまでは我慢して欲しいな。
「ごめんなさい…」
泣いた後だったからまだ目が赤かったかな。
泣いているようにも見えたかも。
「こっちこそ悪かった」って動揺し始めた。
「くそっ……余裕ねぇ、お前の事になると俺格好悪くなる」
必死に何かと戦ってるみたい。
葛藤…されてるのかな。
仮面を拾ってくれた。
手渡されてもう一度「ごめん」と謝られる。
「いえ、私こそすみません……危機管理怠りました」
「いや、お前は良くやったよ……一人ひとりにちゃんと向き合おうとしてる、それが次の接客に繋がるんだ、みっともないのは俺だよ、あぁ、ダセぇ……」
壁ドン状態で項垂れているから「本当ですよ」ってお腹に軽くパンチ。
「お店でこういうのやめてください……乱れます、気持ち的に」
「すまん……」
「もう行って良いですか?」
「え、あ……うん、悪かった」
やけに素直、でも顔はヘコんでる。
きっと我に返ったんだろうな。
さっきのキスは本当に凄かった。
窒息するかと思ったよ。
見境なくされるのは色んな意味で危険。
嗚呼………でも、このままだと。
シャツまで黒のスーツは半端ない色気ですね。
意地悪のお返ししても良いですよね?
「ちょっとしゃがんでください」
「え…?」
ちょっと半信半疑な表情も可愛かったりする。
チュッと触れるだけのキスのお返し。
目をパチクリさせて驚く堤さんに「仲直り」って笑ったら苦しいくらい抱き締められた。
「お前……帰ったら覚えてろ」
「は………はい」
この後2名の指名客。
延長もしてもらえて順調に終わった。