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刑事とJK

第6章 小犬



「なんだ、傘あんじゃねぇか
そんだけ濡れたらさすがに風邪ひくぞ?」


落ちている傘を拾おうとしたときに気づいた





傘の下には、あの小犬がいた



前見た時よりも雨や土でどろどろになった小犬は、傘の下ではぴくりとも動かなかった



ひとつの物体が横になって

そこに落ちていたんだ





オレは腹の奥から変な、もやもやしたものが心臓を通り、喉を通り、口から

ああ

という言葉になって出てきたのがわかった








オレは立ち上がり、ゆうひのほうを向いた




ゆうひはオレを通り越してじっと犬だけを見ていた




オレは自分の傘にゆうひを入れてやった


なんて声をかけたらいいかもわからずに、ずっと黙っていた























『………許せない』



先に沈黙を破ったのはゆうひだった





『…許せない…許せない…あたし絶対許さない…!!』


ゆうひはバッとオレの顔を見た



『小犬が何をしたっていうの!?一生懸命生きていたのに…!!』

オレの胸倉を掴み、強く揺すった



『あいつらが殺したんだ!!
あいつらのせいだ!!
あいつらと…あたしの…』



掴んでいた手の力が緩んだ



『……あたしの…せいだぁ…』


オレはその悲痛な声に堪えられなかった

その今にも崩れて消えてしまいそうな表情を見ていられなかった




オレは傘を落とし、ちから一杯抱きしめた


この悲しみを押し潰してしまうほど抱きしめた




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