
小さな花
第3章 Saliva
「あ~、大丈夫こんくらい。唾つけときゃ治る」
「つ…ツバ?!」
「なんなら俺が付けてやろうか。ククッ」
「う…うん…」
ツバを付けると治るんだ、初めて聞いた…。
「…は?」
「え?!」
私は大真面目にシンくんを見た。
「…お前ねえ、唾つけときゃ治るって…まさか聞いたことないの?」
「え、ない」
少しの間のあと、シンくんは顔をふせてクックックと笑った。
「マジか…そんな奴いんのか(笑)」
そんなに常識的なことなのかと恥ずかしくなってきた。
「し…知らなかったの!んもうっ…自分で―――」
「いいよ、俺がやってやる」
遮るようにしてシンくんが言い、ストッキングの穴をピリッと少し広げる。
そして次の言葉を待たず、私の膝小僧にくちびるをあてた…
「ひゃあッ……!」
熱い舌が突然膝小僧を撫でたから、思わず力が入る。
ペロリと舐めてはゆっくり吸い上げ、また舐めては吸い付いて…
「ん……あのっ――、あ…っ…っ…――ッ…」
性的な行為でないと分かっているのに、私のそこが小さく何度も痙攣した。
「あ、の…シンく…ん…?」
なまめかしいシンくんの舌が私に触れているなんて、どうにも現実が信じられない。
そしてこの…いやらしさあふれるテクニックは…ずるいよ…――
やがて、チュクッと音がして同時に唇が離れた。
「よし」
「あ…ありがとう…」
立ち上がろうとして、腰が抜けていることに気付く。
突然起こったエロティックな現実が、私の下半身を骨抜きにしていた。
「あれ…立てない…っ」
「おいおい。やっぱり酔ってんのか?」
腕を引かれなんとか立ち上がっても、秘部はまだ脈打っていた。
ほんのささいな事でこんなにも感じちゃったのは
舌使いがえっちだったから?
お酒を飲んでたから?
それとも…相手がシンくんだったから…――?
唾液で光る傷口を見つめ、私は何度も舌の感触を思い出していた。
