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トライアングルパートナー

第23章 幸せの共有

 だからこそ、純子は今まで、自分を守るため、人格を分離して生きてきた。その分離していた人格がついに統合されることをお互いがのぞんだ。臨機応変、正義を貫きながら、悪にも寛容な純子が重なり、再編成される。完全なる愛の集合体だ。
 だから、嫉妬などが起きるはずはない。すべての愛は憎しみを超越し、さらに、封じ込めることも可能になる。
 お嬢さま育ちの慶子を変えたのは、夜の純子の存在があったからかもしれない。そう考えると、昼の純子も夜の純子に助けられていた。
 純子はキッチンで進一と慶子が肩を並べて笑いながら作る様子を見つめた。
「慶子さん、あなた、こんなおじさんと帰ったりしないで、デートとか、約束とか、ないの? 若いんだから、若い人とお付き合いしたほうがいいんじゃないの?」
 立ったままで自分の家で居場所を見つけられず、純子が慶子に皮肉を込めて尋ねた。
「純子さまに言われなくとも、そう思って若い人ともお付き合いしてきましたよぉー でもぉー 係長となら安心なんですぅー 何なんでしょうね、この気持?」
 そう言った慶子は、下を向いていた顔を上げて、純子の方を見つめてきた。彼女の笑顔だった顔が、苦しそうな顔になっていた。
 純子は、初めて、慶子と昼休みの会議室で弁当を食べて以来、彼女を、週1回、夕食を作ってくれと頼んだ。3人で食べて他愛のないことを話して帰っていくだけ。不思議なことに、慶子は進一と二人だけになることを避けている。
 あのとき、会議室で、慶子は進一のものを喜んでほおばっていたが、それきりだったようだ。あくまで尊敬する純子に命令されたから行った受動的な行動と言うつもりなのだ。彼女は、尊敬する純子さまの命令は絶対です、と言う。そういう理由を宣言した慶子は、純子が帰宅できる日に限り家にやってくる。もちろん、進一を目当てにくることは純子には分かっていた。
「ねえ、慶子さんはどうしてあたしが残業しないで帰れる日が分かるのかしら?」
 純子は慶子に尋ねた。

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