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トライアングルパートナー

第24章 幸せな食卓

 純子の左隣りに進一が座る。純子の対面に慶子、慶子の隣に植木が座った。昼の人格・純子にとって、何回目かとはいえ、統合が始まってから日没後、初めての夕時間を体験し、幾分、緊張感のある夕食である。
 純子は目の前にキュートな顔立ちの慶子を見ながらその左隣りの彫りの浅い平たんな顔をした植木をチラチラと何気なく盗み見ては「わぁー植木さんだぁ~」と心中で叫びながら興奮していた。
 植木とは職場で同じ部署とはいえ、純子は室長室という個室に入っているので植木をこんな間近に見ることはない。それも何度目かの夕食と分かり、残念な気持ちでいっぱいになっていた。
「なんで、植木さんを目の前に座らせなかったのかしら?」
 純子は心中で潤子に問うた。すると、
「あなた、いきなり意中の男性を目の前にして冷静でいられるほど遊んでいないでしょ? あなたもこれから大好きな植木さんといっぱい楽しみなさいね」
「えっ? 植木さんのことが?」
 純子は顔を真っ赤にさせて思わず声を出した。植木があわてた様子の純子に顔を向けた。
「室長? どうなさいました?」
 純子は植木の声掛けにいつものようにうれしさがこみ上げた。即答しないで喜びをかみしめてしまう。
「さあ、みんなに早く話を切り出すのよ、がんばれ純子」
 夜の人格・潤子の声が頭の中で、昼の人格・純子に言ってせかす。すでに、純子は昼と夜の人格の統合が終了する段階に入っていた。純子の脳内で自問自答する状態ではあるが、全部が統合された純子という認識に馴染めないでいた。
「植木さん、わたし一人では解決できない問題が起きました。ぜひ、お手伝いをお願いしたいです」
 純子は植木に顔を向けて言った。
「はあ、何でもおっしゃってください」
「わたしとこれからはお付き合いをしていただけますか?」
「はぁー? おっしゃっている意味が分かりませんが……」

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