トライアングルパートナー
第8章 二人だけの執務室
進一から見た小山内慶子の行動はとても興味深いものだった。指導をしっかり優しくするように人事部長から依頼された進一は、それを機に、慶子の魅力に取りつかれていった。若いゆえの魅力か、進一は娘のような年齢の女性に引かれていく。
一方、新人である慶子は進一が部下だから特別に教えてくれるものと思っていた。だから、その期待に答えたいと思った慶子は、進一の指導であるならと絶大な信頼をした。信頼することにより、父親と同じくらいの年齢の男性に引かれていく気持ちに戸惑っていた。その理由を考えていた慶子は思い当たることがあった。役所に入所したとき、慶子は、進一の妻である純子に並々ならぬ興味と信頼と畏敬の念を抱いた。入社式で女性管理職としての祝辞をした。そのとき、今田純子は役所内では誰一人と知らないものはいない有名なキャリアウーマンだ、と聞いた。それも、うわさによると、慈悲深い女神様、仏様と尊敬されるまでになっているというではないか。
「あたしも早く有能な行政ウーマンとして認められ、憧れの純子様と仕事を一緒にしたい」
慶子は廊下でときどき見る純子へのあこがれが大きく膨らんでいた。その女神の夫が進一であるのだから、進一への信頼と畏敬は純子に匹敵するほど、だった。そういうことがこのさえない男に興味をひかれる原因ではないか、と思うようになっていた。
「神のようだと言われている奥さまが愛するパートナーってすごくない。それにそんなそぶりも見せないこの人って、もっとすご過ぎない?」
慶子は進一の仕事を1年ほど見てきたが、彼の性格のどこがすごいのか、全く分からなかった。彼女にすれば、窓際と言われる風采の上がらない中年男と言っても、言い過ぎではないくらいだ。しかし、あの純子様がパートナーとして選び、同じ家で生活しているのだから、きっとすごい人なのだ。これは、自分の人を見る目が足りない未熟さに他ならない、と彼女は心から進一をみくびる自分の無能さを恥じた。
「あたしは進一様の部下で幸せだわ」
慶子は心中で思うまでになっていた。そんなすごい人の部下なんて光栄だわ。そう思いながら見つめる進一を見ている慶子は、うれしくて自然と笑顔になっていた。
一方、新人である慶子は進一が部下だから特別に教えてくれるものと思っていた。だから、その期待に答えたいと思った慶子は、進一の指導であるならと絶大な信頼をした。信頼することにより、父親と同じくらいの年齢の男性に引かれていく気持ちに戸惑っていた。その理由を考えていた慶子は思い当たることがあった。役所に入所したとき、慶子は、進一の妻である純子に並々ならぬ興味と信頼と畏敬の念を抱いた。入社式で女性管理職としての祝辞をした。そのとき、今田純子は役所内では誰一人と知らないものはいない有名なキャリアウーマンだ、と聞いた。それも、うわさによると、慈悲深い女神様、仏様と尊敬されるまでになっているというではないか。
「あたしも早く有能な行政ウーマンとして認められ、憧れの純子様と仕事を一緒にしたい」
慶子は廊下でときどき見る純子へのあこがれが大きく膨らんでいた。その女神の夫が進一であるのだから、進一への信頼と畏敬は純子に匹敵するほど、だった。そういうことがこのさえない男に興味をひかれる原因ではないか、と思うようになっていた。
「神のようだと言われている奥さまが愛するパートナーってすごくない。それにそんなそぶりも見せないこの人って、もっとすご過ぎない?」
慶子は進一の仕事を1年ほど見てきたが、彼の性格のどこがすごいのか、全く分からなかった。彼女にすれば、窓際と言われる風采の上がらない中年男と言っても、言い過ぎではないくらいだ。しかし、あの純子様がパートナーとして選び、同じ家で生活しているのだから、きっとすごい人なのだ。これは、自分の人を見る目が足りない未熟さに他ならない、と彼女は心から進一をみくびる自分の無能さを恥じた。
「あたしは進一様の部下で幸せだわ」
慶子は心中で思うまでになっていた。そんなすごい人の部下なんて光栄だわ。そう思いながら見つめる進一を見ている慶子は、うれしくて自然と笑顔になっていた。