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　進一はやれやれ、と思った。直ぐ側に座っているのだから、声を掛けてくれよ、と言いたい。これからは気をつけますなんて、しおらしい事を言ってくれるね。そう思いながら、スマホを見つめる慶子を見て声を掛けた。

「小山内さん、そんなこと、口に出して言いなさいな、こんなに近いのに。何、考えてるのさ、きみは」

　あっ、まずい、今の言葉は今どきの子にきつかったか？　進一が慶子の動向を見守る。慶子は顔を進一に向けてきた。どう見ても怒っている顔だった。

　ピピピピー
　進一のスマホの着信音がまた鳴った。おい、またかよ、と思いながら、進一はスマホの画面を見つめる。

　あたしたち、ラブゲームを始めているんですよね。あたしたちのラブゲームですよね？　

　進一は、あたしたちのラブゲームという言葉を読んで、心臓の音が大きくなって、体中に響いた。昨日のことはやはり妄想ではなかった。画面の文字を追うように、下にゆっくりスクロールする。何が書かれているか分からず怖かった。

　お昼休みにできますか？

　　慶子

　という文字が出てきた。たったそれだけのメッセージである。進一は慶子のほうを見る。スマホを見ていた慶子が、今度は進一の方をじっと見つめていた。昨日のゲーム仲間という言葉が思い出される。いや、二人はゲームの中で恋人になった、と慶子が言っていた。進一はスマホに文字を打ち込む。

　うん

　それだけ、メッセージを入れて、送信した。慶子を見ると、慶子が笑顔でこちらを見て手を振った。