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　朝になって、清々しい純子を見れば、夜の痴態が、朝方には芸術に昇華されていたことが証明された、と思う。あの行為は芸術だ、と知らされる。
　進一にとって、妄想、悪夢と見えた現実は、純子によって芸術に高められた。夜の純子は神々しいほどのエロスを放った。彼女は、昼も夜も神がかっていた。

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「奥さまがそんなにお忙しいなら、息抜きにぜひ誘ってみていただけますか。ほら、あたしは全然かまわないし、うわさになっても困らないんですけど、係長はあたしと二人きりではお困りでしょうから……　奥さまの公認でしたら、お料理もおうちで一緒に作れたりしますし……　ねぇ、聞いてみてくださいよぉー　奥さまにも食べていただきたいんですぅー」
　慶子は手にした手提げ袋を胸の前に抱え持ち上げ構えると、キュートな顔をした後、頭を下げた。
「うん、そうだよね。妻を誘ってみるよ」
　進一は慶子に言うと、並んでオフィスに向かった。
　午前中、進一は純子に電話をしなかった。きょう、彼女と一緒に食べれば慶子と昨日、弁当を二人きりで食べたことが、話の流れで純子に分かるだろう。彼は、彼女の嫉妬心が尋常ではないことを知っていた。進一は、純子の優しさが怖いと感じるときがある。特に、日没後の純子は別人だ。進一は慶子との関係に変なうわさが立つと困る、とは言ったが、うわさより純子に知られることが怖かった。純子には人を思いはばかる優しさがある。まさに、彼女は、大きく、優しい、だれをも包む愛であふれている。進一には彼女が神のように感じる時がある。パートナーとなったのだから平等の関係であるが、特に、日没後、別人となった彼女はさらに積極的な異常な愛を進一に注ぎながら、自分の強い性欲を進一と共有しようとした。だから、進一は、だれにも知られず、会議室で食べたほうがいい、と思った。

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