ナカまで愛でてトロトロに溶かして
第2章 【それぞれの葛藤】
「俺の事、帰しちゃうの?」
「ごめんなさい」
「良いよ、益々手を焼かせようって魂胆なんだろ?」
「あ、バレちゃいました?私、その辺の安い女と一緒にされるのは嫌なので」
「フハハ…!安かねぇよ、でも、そろそろ疼いてくるはずだからその身体……俺がちゃんと刻み込んでやっただろ?」
そう言われてあの日の夜が脳内にフラッシュバックし、一気に顔が火照る。
でも流石は大人の対応。
紳士になってくれる。
「姫に嫌われる訳にはいかないから」と潔く身を引いてくれた。
一人になった後。
ドレスを着た自分を姿見ミラーで確認する。
コレ……色んな意味でヤバ過ぎない?
文句なしに上品。
まさかのブラックでキメてくるとは思わなかったけどちょっと個性的。
ハイネックドレスで膝上の細身ワンピースだが左側だけ腰巻きがあってロングスカートになっている。
ノースリーブだし言わんこっちゃない。
弛んでないよね?
二の腕の引き締めトレーニングは日頃からやってたもん。
実を結んでよね!
当日はあまり目立たないようヘアセットは編み込みにした。
カルティエのホワイトゴールドの揺れるピアスとフランクミュラーの腕時計を着ける。
頑張って稼いで自分のご褒美で買ったピアスと結婚記念日に章介に買ってもらった腕時計だ。
昼過ぎにやって来た鍵山さんとアシスタント2人。
完成形の私を見て息を呑んでいる。
久しぶりにドレスコードしてメイクもバッチリした。
「綺麗です、アキ先生」
「ん……ありがとう」
クロッチバックを手に鍵山さんと出ていく。
入れ違いに引き継ぎして作業も時間内通りに終わる量を与えてきた。
「皆、今日はタカラアキが出席するってわかってソワソワしてたぞ?」
「やめてください、その謎のプレッシャー」
「大丈夫、しっかり背筋伸ばして胸張って歩けよ?堂々と見せてやれ」
「見せ物じゃないですから」
ついつい可愛げないこと言っちゃうんだよなぁ。
いい加減鍵山さんに愛想つかれそう。
2人きりで降りていくエレベーター内。
「あ、そうだ…」と言って視線と共に唇も奪われる。
軽く、触れるだけ。