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副業は魔法少女ッ!

第4章 想いの迷い子



 秋の暮れ、温かな飲み物が恋しくなって、オフィス街がまだ動き出すより早い時間、カフェに入った。メニューで惹かれたカフェラテより、こんがりと焼けたトーストの匂いが、不意に椿紗の感性に、繊細な作用をもたらした。


 一色明珠という有名人を雇用したあとも、魔法少女を志望してくる女達は後を絶えない。大々的に募集のかけられる類の職業でなければ、スカウトしても、契約まで漕ぎ着けられるのはひと握りで、特に今年は夏休み前、案件も手に負えなくなるほどの人手不足に陥った。それでも、世間にはゆいかのような生きたがり屋や、ゆづるのように、やむを得なく金を稼がなけらばいけない人間が、一定数いる。幸い、寝屋川や本島達の一件あと、特に変わりない日々が続いている。ゆづるの恋人が生還したカラクリについては椿紗にも心当たりがないが、今のところ、彼にもなずなのような固有魔法があったのだと考えるのが安易である。



「でさ、ルシナメローゼ…──やばくない?」


 つと、とりとめない店内音楽を拾っていた椿紗の耳に、電流が走った。

 囁き合う女達の秘めやかな声は、椿紗がそれまで耳を傾けていたオルゴールと変わらない。だが同じ音量でも、自分とは無関係なものと自分に深く関わるのとでは、刺激が違う。

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