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アシスタントで来ただけなのに…!

第1章 鬼才漫画家、市川ルイ

_二日後

ルイ先生と初めて会った日から、私は先生と共同生活を始める為に準備したキャリーケースを広げた。

母は住み込みで働くことになったと伝えたら、きっと反対すると思ったが、涙ぐんだ表情で私の手を握ってくれた。

あの日、食べれなかった母のお弁当を夕食で食べると、やはり冷めていた。だけど母の愛と頑張ってほしいと願う気持ちが篭っていて、心の中では温かく感じた。

そんな母の為にもこれから頑張ろうと意気込んだ。

広げたキャリーケースの中身を一つ一つ確認して、忘れ物がないか入念にチェックする。
最悪、足りない物が出てきたとしても後から買い足せばいいと思い、荷物はできるだけ少なめにした。

とは言ってもやはり女のいうこともあり、必要不可欠な荷物はキャリーケースから溢れてしまった為、入らない分は大きめのバッグに詰めた。

かなりの大荷物。そりゃ旅行とか合宿とかではなく、今日からルイ先生の元で住み込みで働くのだから仕方がない。

本当は荷物を配達してもらおうと思ったが、どれくらいの期間住むことになるか不明だったので、できるだけ自分で持っていくことにした。

「…加奈子」

チェックを終えたキャリーケースを閉めていると、母が扉から顔を覗かせていた。
いつもの声色と違い、少し強ばっていて表情も曇っていた。

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