
アシスタントで来ただけなのに…!
第1章 鬼才漫画家、市川ルイ
ルイ先生の屋敷を出て、気づけば電車を降りて見慣れた町を歩いていた。
コツコツとパンプスの音を鳴らせて、母が待つ家へ向かう。
学校帰りかと思われる学生たちが歩いているの見て、懐かしい気持ちになった。
ふと、学生の頃に初めてルイ先生の漫画を手に取った日を思い出す。
懐かしい思い出のはずなのに、昨日のように覚えていた。
書店で買って、家まで持っていく時間がとても歯がゆく感じるくらい楽しみにしていた。
あの時の高揚感は、まるで染み付いてるかのように私の中心にあった。
そして、私は心中を軸に生きてきた。
市川ルイが全てだった。だから郵便ポストに入った茶封筒も、メールも、地図も全て信じてきた。
会えると信じて、どんな人物なのか拝見できることを信じて。
それが今日叶った。やっと。そして私が夢見てた市川ルイを目の前で慕い、作品作りを共に手掛けられることも全てが叶った。
なのに、そのはずなのに、
私は複雑な気持ちを抱いていた。
それはルイ先生がアシスタントではなく、モデルを探していたからなのか。
参考にする為に私の体を弄ぶかのように触れたからか。
しかし先生に触れられた時、抵抗感はなかった。
まるで冷たい人形のように淡々とした先生が、どこか惹かれるところがあったからだ。
きっとあの時、少しでも嫌だと感じていたら私は逃げ出していた。
それを私はしなかった。
心の中で言葉にしてみた。
先生は、何色なんだろう。
人には色がある。声にも色がある。
なのに先生は何色も感じない。
青か、黒か、藍色か、いやあれは無色だ。
繊細な瞳はどこか冷たくて、人によっては氷に見えるかもしれない。
何を見てるんだろう。何を感じているんだろう。
ルイ先生を思いながら、また心の中で言葉にした。
私だって、何色でもない。
なにもない、だってずっと私の世界の中心は市川ルイだったから。
不安はある、恐怖心まではいかない戸惑いもある。
でもずっと中心にいた市川ルイをもっと知りたい。
何色なのか、何を見てるのか、知る為に出会ったのかもしれない。
今度は心の中ではなく、言葉にして呟いた。
「…先生についていこう」
夕焼けの空は綺麗だ。
私は琥珀色に染まった空を仰いだ。
気づけば思い悩んだ心は、晴れていくような気がした。
コツコツとパンプスの音を鳴らせて、母が待つ家へ向かう。
学校帰りかと思われる学生たちが歩いているの見て、懐かしい気持ちになった。
ふと、学生の頃に初めてルイ先生の漫画を手に取った日を思い出す。
懐かしい思い出のはずなのに、昨日のように覚えていた。
書店で買って、家まで持っていく時間がとても歯がゆく感じるくらい楽しみにしていた。
あの時の高揚感は、まるで染み付いてるかのように私の中心にあった。
そして、私は心中を軸に生きてきた。
市川ルイが全てだった。だから郵便ポストに入った茶封筒も、メールも、地図も全て信じてきた。
会えると信じて、どんな人物なのか拝見できることを信じて。
それが今日叶った。やっと。そして私が夢見てた市川ルイを目の前で慕い、作品作りを共に手掛けられることも全てが叶った。
なのに、そのはずなのに、
私は複雑な気持ちを抱いていた。
それはルイ先生がアシスタントではなく、モデルを探していたからなのか。
参考にする為に私の体を弄ぶかのように触れたからか。
しかし先生に触れられた時、抵抗感はなかった。
まるで冷たい人形のように淡々とした先生が、どこか惹かれるところがあったからだ。
きっとあの時、少しでも嫌だと感じていたら私は逃げ出していた。
それを私はしなかった。
心の中で言葉にしてみた。
先生は、何色なんだろう。
人には色がある。声にも色がある。
なのに先生は何色も感じない。
青か、黒か、藍色か、いやあれは無色だ。
繊細な瞳はどこか冷たくて、人によっては氷に見えるかもしれない。
何を見てるんだろう。何を感じているんだろう。
ルイ先生を思いながら、また心の中で言葉にした。
私だって、何色でもない。
なにもない、だってずっと私の世界の中心は市川ルイだったから。
不安はある、恐怖心まではいかない戸惑いもある。
でもずっと中心にいた市川ルイをもっと知りたい。
何色なのか、何を見てるのか、知る為に出会ったのかもしれない。
今度は心の中ではなく、言葉にして呟いた。
「…先生についていこう」
夕焼けの空は綺麗だ。
私は琥珀色に染まった空を仰いだ。
気づけば思い悩んだ心は、晴れていくような気がした。
