
ほしとたいようの診察室
第2章 遠い記憶と健康診断
問診票をめくりながら、吹田先生は感慨深いと言ったような声を出す。
「ふーん……のんちゃんも20歳になったのか……」
「あ、の……短大出て、ここの食堂で、働くことになりまして……」
「そうかそうか……日野先生と澤北先生にはもう会った?」
「いえ、まだ……」
ひ、日野先生……。トクン、トクン、と心臓の音が緩やかな坂を転がるように速くなっていく。
「なるほど、食堂でねぇ……。日野先生は毎日食堂使ってるから、多分嫌でも顔合わせると思うけれど」
「……?!」
そ、そうなの……?!
幼少期の時のまま、日野先生の笑顔を思い出して、固まる。
なぜだか、バクバクと心臓の音が、急に激しく早くなってしまった。
「じゃ、胸の音聴かせてね?」
