
ほしとたいようの診察室
第2章 遠い記憶と健康診断
「のんちゃん、元気してた?」
「うん、最近は体調崩してないよ」
「えらいじゃん!」
吹田先生に脅されたのとは反対に、蒼音くんは純粋に褒めて、小さい時みたいに頭を撫でてくれた。心の中がくすぐられるみたいだ。
「ほんと……大きくなって。もうお酒が飲める歳だなんて、信じられない」
蒼音くんも、きっとわたしと同じ数だけ歳をとっているはずなのに、長い月日を全然感じさせない。
「う、うん…… ここの食堂で働くことになって」
「へぇー! 好きだったもんね、プリン! よく連れてったなぁ……泣いた後に、のんちゃん、無言で一生懸命食べてたもんね」
蒼音くんはわたしに、ご褒美のプリンを食べさせるために、食堂に連れていってくれた回数が、多分、いちばん多い。
プリンを食べるわたしを穏やかに見守ってくれた。
だいたい、その直前は嫌な治療があって泣いていたから、蒼音くんは
『おいしいんだね。よかったね』
って声をかけながら、わたしの頬にあった涙のあとを拭ってくれたっけ。
思い出に浸りかけた時、蒼音くんが気を取り直したように真面目な顔をした。
