
ほしとたいようの診察室
第2章 遠い記憶と健康診断
「……陽太先生……」
陽太先生の大きな手が、わたしの頭を撫でた。
陽太先生の体温が体に触れる度に、胸が跳ねる。
「そう、当たり。覚えてて良かった」
陽太先生がにっこり笑った。
雨に似合わないその笑顔は、直視できないくらい明るい。
「のんちゃん、何しようとしてた? 」
赤くなった顔を見られたくなくて俯いていたら、陽太先生がしゃがみこんで、わたしの顔を覗き込む。
「……家に、帰ろうと思って……走って……。傘がないから……」
心臓が、バクバクと音を立てて、言葉が上手く出てこない。
それでも、陽太先生はわたしの言葉を拾う。
変わらなかった、小さい時も。
陽太先生は、わたしの言葉を待っていた。
「自分で持ってきた傘は、貸しちゃったんだ?」
頷くと、陽太先生が優しく笑う。
「……全く、お人好しなんだから。全部見てたよ。顔上げて」
