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ほしとたいようの診察室

第8章 入院生活は続く



やがて、視線はほとんど手のつけられていない朝食のお盆へうつる。

「薬は、飲んでくれたんだね」

空になった錠剤のアルミを見て、吹田先生はこの日、初めて微笑んだ。

「……はい」

ぶっきらぼうに頷いたけれど、吹田先生は怒ることなく、ゆっくりとわたしの目を見つめた。

「のんちゃん、食べるのつらい?」

探るようなその視線をかい潜ることはできずに、わたしは小さく頷いた。

「そっか……じゃあさ、のんちゃん」

吹田先生が白衣のポケットを探った。
ポケットから、小さなプリンのようなものを出して、テーブルの上に差し出した。



わたしはそれを、よく知っている。
見たことあるし、短大時代に味見したこともある。




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