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ほしとたいようの診察室

第8章 入院生活は続く





「わたしばっかり……かっこ悪いね」






気がついたら、呟いていた。


口から何気なく出て行った言葉は、もうキャンセルすることができないまま、陽太先生の耳に入った。

陽太先生が手を止める。

じっと見つめられている気配がして、そっと目を開けた。少しだけ微笑んでいる陽太先生が、そこにはいた。



「格好悪いか……そうかな。」



その柔らかい笑みは全てを包むような優しさがある。


「誰だって、そう見える時と見えない時があると思うよ」


「……陽太先生も?」


「うーん。のんちゃんの目に映っている俺が、そんなふうに見えないとしたら、上手になっただけだよ。繕うのが」


「繕う……」



繕えることが、大人になることだとしたら。

わたしはまだまだ、子どもなんだろうか。

それとも、陽太先生の目には子どもとして映っているんだろうか。







わからないことがあぶくのように湧き上がっては消えて、消えては湧き上がる。




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