ほしとたいようの診察室
第8章 入院生活は続く
手にはスマホと救急バッグを持っている。
陽太先生のいつもの髪型が少し崩れていた。
たすかった……
ほっとして、声が出なかった。
陽太先生はすぐさまわたしの近くにしゃがみ込むと、救急バッグの中身を漁って薬を取り出した。それをわたしの口に咥えさせる。
「ちょっと口開けるよ、息吐いて」
陽太先生がわたしの顔に触れる。いつもより力が入ったその手の動きに、陽太先生から見ても自分が危機的な状況であることに気付かされる。
「吸って」
合図もともに弱く息を吸うと、そのタイミングを見逃さずに薬を放つ。
プシュッ。
「もう一回いくよ、吐いて」
陽太先生は、冷静にわたしの顔を見ながら薬を吸わせていく。その眼差しに、既に反省と後悔が押し寄せていた。
「吸って」
プシュッ。
陽太先生の怒ったような心配したような表情を初めて見た。
「っゲホッ、はぁ、ハァ……」
咳が止まる。ようやく息の吸い方を思い出した。
体に酸素が行き渡り、同時に腹痛が蘇る。
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