ほしとたいようの診察室
第8章 入院生活は続く
いま、目の前にのんちゃんがいる。
20歳になったのんちゃんの中に、5歳の、あの時ののんちゃんが時々見え隠れする。
のんちゃんは、泣きながら俺に話してくれた。
今までの苦しかったことの全てを。
俺になら話して良い。そう思ってくれたことが嬉しかった。
そして、大きな想いを託してくれた。
「ようたせんせ……わたし、だいじょぶだよね……? なおるって、言って……」
夕焼け空の余韻が入り込む病室で、その言葉ははっきりと俺の耳に届く。
懐かしくも、新鮮な光景だった。
今も昔も。のんちゃんが、俺の言葉を必要としてくれている。
のんちゃんは、泣きじゃくりながら言葉を重ねた。
「ちっちゃいときみたいに……なおすって、やくそくして……」
心細そうに、でも強い力で縋るように。
切実なその言葉に、胸ぐらを掴まれるような感覚になった。
俺はもう、主治医ではない。
主治医ではないけれど、医師である。
そして、目の前の彼女が、存在としてとても大きなものになってきていることを、ここで認めざるを得ない。
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