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ほしとたいようの診察室

第8章 入院生活は続く



それから、たくさんの命を見てきた。

救えなかった命だって少なくない。

その度に、幾度となく心を灰にしてきた。




救える命を増やせるように。



その一心で、勉強し続け、手腕を上げ、治せるだけの自信をつけてきた。


しかしその反面、いつしか子どもと約束はしなくなった。


臆病になってしまっていた。

可能性に上がってくる、わずかな、悪い『もしも』が怖かったから。



表面上の笑顔を保つことも上手になった。

子どもとの関係を築くことも、難しくなかった。




だからこそ、その『もしも』がとても怖かったのだ。



いつからか、保守的になっていた。

確実にやれることを。
自分の手が届くところまでは、責任を持つ。

決して諦めが多かったわけではない。しかし、諦めざるを得なかったことは重なっていく。



キャリアを積めば積むほど、心は小さく閉じていった。





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