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ほしとたいようの診察室

第9章 ひとときの外出



「目、つむって?」


言われた通り、目をつむる。
そっと、叶恵さんの手がわたしの頬に触れた。
その優しい触れ方に、ほっとする。
と同時に、何もしていない手が寒くもないのに細かく震えた。


「……緊張してる?」


頷くと、ふっと叶恵さんが笑う気配がする。
アイラインを引く手は止めずに、叶恵さんは言った。


「楽しんでおいで。いつも通りののんちゃんでさ」


「……うん」


「ここまでよーく頑張ったんだから、陽太先生によーく褒めてもらっておいで」


話している間も、叶恵さんは手際良くメイクを施していく。
顔が終わると、今度は髪の毛をするすると編み込みにしていく。細くて器用な指先を編み物でもするかのように複雑に動かして、大人っぽくまとめあげる。部屋に来て10分も経ってないのに、あっという間に様々な準備が終わっていく。


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