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ほしとたいようの診察室

第9章 ひとときの外出



お会計をする段になって、わたしが財布を取り出すと、陽太先生は手でそれを制した。


さっとなんでもないように、大きいお札を1枚、コイントレーに乗せる。


「……! 悪いですよ!」


言いながら陽太先生を見上げると、陽太先生は優しく首を振る。



「ここは黙って従うこと」



下された絶対命令に渋々頷き、財布をしまい込む。


「ありがとうございます……でも……これじゃあ本当にデートみたい……」


呟くわたしに構わず、お釣りを受け取りながら陽太先生は笑った。





「デートだよ」





思いがけず真っ直ぐにそんなことを言うから、心が変な錯覚を起こす。
陽太先生まで、吹田先生に感化されてしまったのだろうか。


ドキドキしだした胸を抑えつつサッカー台で買ったものを詰める。

アンパンのキャラクターのチョコレートが、意味もなく買われていたことに今更気づいた。





袋にパンパンに食材を詰め込むと、それを陽太先生が持ち上げて、歩き出す。


駐車場に戻るまでの道のり、顔を上げて陽太先生を見ることができなかった。






……




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