ほしとたいようの診察室
第9章 ひとときの外出
「お邪魔します」
陽太先生が律儀にぺこりと頭を下げるので、わたしもお辞儀を返す。
陽太先生はスニーカーを揃えると、わたしが揃えて出したスリッパに足を通した。
陽太先生にしてみたら、少しサイズが小さかったようで、顔を見合わせてくすくすと笑う。
「狭くて申し訳ないですが、適当に座ってください」
お茶を出そうとグラスを2つ用意する。来客用のグラスをふたつ。ティーポットに、沸かしたお湯を注ぎ、ティーパックを浮かべる。
暑いので、冷茶にしようと氷をグラスに入れるとカラカラと小気味良い音が鳴る。
ただ、この作業ですら楽しいと感じた。
なんの変わりものない、お茶を淹れる作業ですら、なまった体を起こすリハビリになる。
「いま、お茶入れてます」
陽太先生に声をかけると、
「お構いなく〜」
と、のんびりした声が返ってくる。
この部屋に1人じゃない、ましてや陽太先生がいることにくすぐったさを感じていた。
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