ほしとたいようの診察室
第9章 ひとときの外出
お茶をお盆に乗せてリビングへ向かう。
「お待たせしました」
ローテーブルにコースターを置くと、2人分のお茶をゆっくりと置いていく。冷房がようやく効き始めた部屋に、氷がぶつかる涼しげな音が響いた。
「ありがとう」
陽太先生が、丁寧にお礼を述べてくれる。
恐縮である。
「どうぞ、粗茶ですが……」
わたしも、陽太先生の向かいにおずおずと腰を下ろす。
自分の家なのに、落ち着かない。
パステルカラーの水色を基調とした淡い部屋の中に、陽太先生がいる。その事実に軽いめまいを起こしそうだった。
陽太先生が、グラスに手をかける。
「良い香り、おいしいね」
驚いたようにグラスを見つめて、もう一口飲んだ。
「桃の烏龍茶です。夏はよく冷やすととってもおいしいんです」
烏龍茶に桃の風味がついた白桃烏龍は、わたしのお気に入りである。
久しぶりに口にしたその味に、やっと我が家に帰って来た心地がして一息つく。
作品トップ
目次
作者トップ
レビューを見る
ファンになる
本棚へ入れる
拍手する
友達に教える