ほしとたいようの診察室
第9章 ひとときの外出
笑いながらお茶を飲むと、陽太先生は不意に優しい目をしてわたしに言った。
「本当、よく頑張ったよ。ここまで」
いっぱい吐いたことや、大変な治療をしたことは、忘れたくても忘れられない。
正面に座る陽太先生の視線から外れることはできないけれど、わたしは目を逸らす。半袖から伸びる太くて、でも優しい腕が持ち上がって、わたしの頭を撫でた。
もうこうして撫でられるのも何度かわからないけれど、その度に緊張しながら安心する、ちぐはぐな気持ちになっていた。
テーブルを挟んで、正面に向かい合わせになっているのだ。陽太先生の視線から逃げることができないまま、照れをうまく隠せない。
お茶を飲み干して、すくっと立ち上がる。
置いたグラスの中でカランコロンと氷が踊った。
「作ります、ご飯」
照れ隠しに勢いよく宣言する。
「じゃあ、アシスタントするから」
陽太先生も立ち上がって、後からゆっくりついてくる。
「いやいや! ゆっくりしててください!」
振り返って手で制した。リビングに押し戻そうと厚い胸板を押したが、びくともしない。
今日はお礼も兼ねてご飯を作るのだ。陽太先生はゲストである。
しかし。
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