
ほしとたいようの診察室
第2章 遠い記憶と健康診断
食べることは好きだ。
食べるものを作ることも好きだ。
気分転換がしたくなって、台所へ行く。
母が整理していたキャビネットから、ティーポットとティーパックを取り出した。
ケトルでお湯を沸かして、ゆっくりと茶葉を蒸らす。3人分のマグカップを準備して、冷蔵庫を開ける。ここに来る前に、母がコンビニでプリンを買ってくれた。なんだかんだ娘には甘いらしい。
「それにしても……良かったわ、社宅がある職場で。変な人も住んでないだろうし、もしかしたら、隣はお医者様かもよ?」
気を取り直した母が、そんなわたしを横目で見ながら、つぶやくように言った。
「……! それは、なんかやだ……」
……お、お医者様……。
そんなワードが出ただけで、少し背筋が伸びるのはなぜなのか……。
危うくプリンを取り落としそうになる。
「入職したらあいさつするのよ。特に日野先生と、澤北先生には」
「うんー……」
日野先生と、澤北先生……。
