
ほしとたいようの診察室
第2章 遠い記憶と健康診断
「まあまあ、母さん、大丈夫だろ。のぞみももう子どもじゃないんだし。昔よりは体も丈夫になったんだから」
のんびりと、説明書を読みながら家具を組み立てる父を見て、わたしは父に似たと確信する。
「そうだよ! 大学生の間は体調管理ちゃんとできてたんだからね!」
思わぬ加勢を得て、母に言い返すと、母は厳しい表情を崩さずにビシッと言いのけた。
「大学生の間、皆勤だったくらいで油断しないの! 社会人はそれなりに大変なんだから」
他の誰でもない、母がそれを体現している。
母は、結婚前から商社に勤めている。
とにかく全国海外と出張で飛び回り、バリバリと仕事をこなしてきた。
結婚してわたしを産んでからも仕事を続け、今でもキャリアを積み続けている、生粋の仕事人間だ。そんな母から、『社会人は大変』とひと言出されてしまうと、ぐうの音も出なくて押し黙った。
しぶしぶ、ゆっくりとクローゼットに物をしまう。
社会人とはいえ、大学時代にバイトでやっていた調理の仕事と大きく変わることはない。仕事も8時間勤務で、残業は少ないと聞いている。
