
ほしとたいようの診察室
第4章 心と身体
わたしの右腕をさわり、血管を浮き出させながら、吹田先生はポツっと独り言のように呟いた。
「病気、治らないと思ってる?」
どうせ良くならない。
そんなことを考えて、帰路に着いたことも思い出す。
はい、とも、いいえ、とも言えなくて。
黙っていたら、採血の針がひんやりと右腕に当てられる。
「ちょっとチクッとするよ、右手グーにしてみ」
「……っ」
痛いかと思って目をぎゅっとつむったけど、本当にチクッとしかしない。
ゆっくりと血液を抜きながら、吹田先生は言った。
「再発したことは事実。仕方ないさ」
手元の採血を進めながら、静かにそう話し始めた。あくまで、手元に集中しながら、呟くように。
「だけど、良くなる余地があるのも事実」
良くなる、可能性……。
「なにも焦ったり、諦めたりはしなくていいんじゃないかな」
コト。っと、心の底になにかが置かれたような感じがした。
昔から、色んなことを諦めてきたことを思い出していた。
