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ボールは友達!蹴っ飛ばせ!

第9章 スバルの遺書(真)

〜斎藤スバルの遺書〜
まず、父さん、母さん、婆ちゃんに言いたい。先立つ不幸を許してくれ。俺は全て知ってしまった。もうこの世にこれ以上いることはできない。美咲が死んでしまったことは昨日知った。雨の中に9時間も晒されていたって。謝って済むことじゃないのはもちろん承知の上だ。自分のしてしまった罪と向き合うべきなのはわかっている。だが、この苦しみに耐えられそうもない。せめてもの罪滅しとは言わないが、死ぬ前に国を告発したいと思う。国は今回の事件と僕の記憶の読み取り結果を隠蔽しようとするだろう。12年前に終結したロシアによるウクライナ侵攻。日本はウクライナ政府の要請を受け、数十名の特殊部隊を派遣していた。その一員だったのが父さんと母さんだ。俺の生まれはウクライナだったんだ。そこで、父さんら特殊部隊はロシア将校の拷問も行っていた。当然国際法違反に当たる。俺の記憶が蘇ってから、妙に体が清々しい。今のオレには何が正しくて何がまちがいなのか分かる。友だちが何なのかも。ウイングくん、君が言いたかったことも今なら分かるよ。君は、「ボールは友だち」とおんなじで、こわくなんかないよっていってたんだね。ごめん、みさきちゃん。ごめん、パパ、ママ。さいごに、このいしょをみたひとたちにつたえたい。オレのようなこどもをうまないでほしい。せんそうをしないとちかってほしい。ひとりひとりがよわくても、みんなのおもいがあつまれば、きっとみらいはかえられるはずだから。

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