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シャイニーストッキング

第8章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一

 202 愁い、憂い…

 そのノンの目が
 今更、そんな事言わないで…
 と、語り掛けてきているように感じていた。

 そうだよな、今更だよな、そんな調子のよい言葉なんて…

 いらないし、聞きたくないよな…

 少し心がザワザワと騒ついてくる。

「あら、今度は硬くならないんだ」
 するとノンは唇を離し、私のすっかりうなだれて萎れているモノに触れ、微笑みながらそう囁いてきた。

「あ、う、うん、ま、そんなに若くないってことかな…」
「ううん、こうちゃんはまだまだ若いわよ、それにあんまりあの頃と変わってないし…」

「いや、それは…」
 いや、それは、さすがに老けた…
 と続けようとすると

「ううん、全然変わってないわ、あの昔のまんま…
 だから…」

 だから…
 ノンはそう言って私の目を見つめてきた。

 その目はさっきまでの濡れた欲情の目ではなく、なんとなく愁い、憂いを帯びた目であった、いや、そう私には感じたのだ。

 変わっていない…

 昔のまんま…

 そのノンの言葉のウラを返せば、大学に入学をし、東京に上京してそのままバックレたあの昔のまんま…
 と、いう意味にも取れる。

 つまりは…

 もう20年前の無念の想いを遂げられてスッキリできたから…

 だから…

 もう帰れ、帰ってほしい…
 というノンの、無言の言葉ではないのだろうか。
 そう一瞬の内に感じたのである。


 すると…
「あ、あのね…」
 言い辛そうに口を開いてきた。

「あのね、アイツが、やきもち焼き過ぎちゃってさぁ、今から来るっていうのよ…」
 と、言ってきたのだ。

 ああ、やっぱりな…

「さっきさぁ、あまりにもしつこいからつい、元カレと会ってるって言っちゃったのね…
 そしたらさぁ、来るって効かないのよ…」

「それは、そうだろう…」
 私は思わず苦笑する。

 自分が彼の立場でも同じで、愛しい彼女が元カレと一緒に会ってるって訊いてしまったならば、居ても立ってもいられなくなるのは必至であるのだ…





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