テキストサイズ

シャイニーストッキング

第8章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一

 206 偽善者

 そんなこの『愁い、憂い…』という感情はよりきよっぺから強く感じてきており、このワンコールからはそんな彼女の想いや感情がひしひしと伝わってきていたのである。

 既にいきさつはどうあれ、きよっぺの心の中には一昨夜から私という存在が大きく占めているはずであるのだ。
 
 そしてその私という存在が
この『愁い、憂い』という彼女の感情を更に強めてしまっているのではないのか…
 そんな想いが、このワンコールの着信という事実からザワザワと私の心を騒つかせてきていた。

 全ては私が悪いんだ…

 後先の事を考えずに、その場限りの、そして見境なく、オスの本能の命ずるままに行動をする…
 いや、した結果がこのワンコールなのだと思うのだ。
 そしてそんな彼女の想いや感情を考え、理解をしていながらも、またこうして私は彼女の元へ、部屋へと向かっているのである。
 その結果、後々に、彼女が辛く、悲しむ事になるのを分かっていながらも、こうして彼女に逢わずにはいられないのである。

 私は最低だ…

 そして優しいフリをした偽善者でもある…

 きよっぺに対してだけではない、律子に対しても同じであるのだ…

 いや、さっきのノンに対してもである…

 ただ…

 ただ、ただ、オスの本能を…

 オスの欲求を我慢出来ないだけなんだ…

 そんな想いを考えながらもマンションのエントランスに入り、1011号室のインターホンのボタンを押す。

 ピンポーン…

『はぁい…』
 きよっぺの嬉しそうな声が聞こえてきた。

『どうぞ、鍵開けたから上がってきて…』
 と、インターホン越しからその明るいきよっぺの声が聞こえ、そして私の心を騒つかせてくる。
 だが、偽善者でもある私は心を騒つかせながらも、昂ぶりをも感じていたのだ。

 ついさっき、しかも約1時間前に、ノンを抱いたばかりのくせに…
 




 

ストーリーメニュー

TOPTOPへ