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シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 115 目力を込めて…

「いや、でも、ホント、懐かしいなぁ…
 マジで、解説者やらないか?…」
 過去にわたしとそんな経緯があったのにそんな事を云ってくる、彼は、本当に懲りない男である。

「もお、久しぶりに再会したのに相変わらずですね…」
 わたしは目に
『変な昔の話しはしないでよ…』
 と、いう意味を精一杯、目力に込めて彼を睨みつけ、そう言った。

「あ…いや、うん…
 じ、じゃぁ、そこら辺よく考えてみてよ…」
 と、彼はそう、少したどたどしく応えてくる。
 
 どうやらわたしの真意が伝わった様であった…

「ま、あり得ないですけどね」
 わたしは更にそう突き放して応えた。

「いやいや、そう言わずにさぁ…
 あ、そうだ、連絡先を教えてよ…」
 そして、更にそう言ってきた。

 本当に、相変わらずに懲りない男である…

「え、あ、あの土井さんに聞いてください…
 わたしの会社の連絡先は分かっている筈ですから…」
 てな、わたしはそう突き放す。

「うひぁ、相変わらずお嬢さんはキツイなぁ…
 だけど、そこがまた堪らない魅力なんだけどなぁ」
 稲葉ディレクターは本当に懲りない男、輩であった。

 確かにあの昔も、わたしがこんなツレなく、冷たくあしらっても今と同じような言葉を言いながら食い下がってきていた…
 性格というモノは何年経っても変わらないのだろう。

「じゃあ失礼します」
 わたしはピシャリとそう冷たく言い放ち、杉山くんを促して、彼に背を向ける。

「あ、そう、あの頃の人達とは会っているの?…」
 すると突然、彼はそう言ってきた。

「いえ…全然です」
 わたしはすかさず振り向き、そしてきつく彼を睨みつけ、有無を云わさぬ毅然とした想いを精一杯目力に込めて、そう冷たく言い放ったのである。

「あ………そ、そうか、じゃ、また…」
 すると、わたしの想いが伝わったようで、小さな声でそう返事をしてきたのだ。

 彼も叩けば色々とホコリとボロが出る身ではあるのだ…
 きっと、これで余計な話しはしない筈であると思われた。

 カツ、カツ、カツ…

 そしてわたしは杉山くんを引き連れ、テレビ局のリノリウムの床にカツカツとヒールの音を響かせながら、エレベーターへと向かっていった。

 またそのヒールの響きはわたしの苛立ちの音でもあったのだ…





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