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シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 117 不安…

 わたしの過去の黒歴史のヤバさには違いはないのであるが、やはり、寝てるのと寝ていないのとでは、つまり、マリファナでの決めセックスをしているのとしていないのとでは想いの重さが違うのかもしれない…
 つまりわたしは、過去は知られてはいるのだが『稲葉ディレクター』とは寝てはいない、つまりセックスをしてはいないのである。

 武石健太…

 遠藤タカシ…

 三山蓮太郎こと三山蓮…

 そして稲葉ディレクター…
 と、しかしなぜ、あれから約8年も経ってから突然、こうもわたしの黒歴史の生き証人といえる様な存在が次から次へと現れてくるのだろうか?…

 何かの意味があるのだろうか?…

 そんな一抹の不安を弱冠感じながら、東京タワー目の前にある芝公園近くのイタリアンレストランで杉山くんとランチを食べながらそんなことを考えていたのである。

「いやぁ、ヤバいっス」
 するとわたしのそんな嫌な思考を吹き飛ばす勢いで、杉山くんがそう言ってきたのだ。

「え、ヤバいって?」
 わたしは一瞬、ドキッとしてしまう。

「あ、いや、美味いっス」

「なぁんだぁ、美味いってことかぁ」

「はい…美味しいっス…
 それに佐々木部長と一緒だから尚更っスよ」

 本当に杉山くんは明るくて面白い…
 なぜならば、彼のその言葉にこの嫌な想いがスウっと消えた感じになったのだ。

「またぁ、すぐそんなことを言ってくるんだからぁ…
 今日の口止め料代わりと、プレゼンが良く出来たご褒美よ…」
 わたしは自分自身の気分転換の意味も込めてそう言った。

「いや、仕事ではあるんスけど、こうして佐々木部長と二人で食事できるのが嬉しくってぇ…」

「ええ、そうなの」

「あ、はい…、まるでデートみたいじゃないっスかぁ…」
 と、満面に笑みを浮かべながら言ってきたのだ。




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