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シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 125 誘われて…

「あ、そうだぁ、佐々木部長…
 夕メシ行きませんかぁ…
 昨日、今日ってランチご馳走になっちゃったっスから、俺がおごりますよぉ」

「えっ…」

 何故かわたしは、その杉山くんの誘いの言葉に、ドキッとときめいてしまったのだ…

 決して甘い誘い方ではない、どちらかといえばぶっきら棒な感じではあったのだが、なぜか彼の言葉からは優しさを感じてしまったのである。
 

「昨日、今日って美味しいランチご馳走になったスから、奢らせて下さいよぉ…」
 ぶっきら棒ではあるのだが、なんとなく杉山くんにも、どうやらわたしを誘っている…
 と、いう照れがあるような感じが言葉の端から感じられてくる。

「えっ、あ、いや…」
 そんなぶっきら棒な杉山くんの言い方なのだが、わたしはかなり心が揺れてしまい、そんなたどたどしい感じに戸惑ってしまっていた。

「どうっスか?」
 恥ずかしそうに訊いてくる。

「いや…、うん…」
 なぜか心が揺れていた。

 なぜわたしは、こんな杉山くんの誘いに戸惑っているのか?…
 わたしは一瞬、自問自答してしまう。

「あ、そうかぁ、やっぱり佐々木部長は約束とかあるのかぁ」
 わたしが戸惑ってるとそう呟いてきた。

 いや、行きたい…かも…

 わたしはすぐにそう思ったのだが、なんとなく素直に返事がしたくなかった、いや、すぐに返事をする事が考え過ぎなのだろうが、なんか杉山くんに見透かされてしまう気がしてきていたのである。

 それはわたしの杉山くんに対する上司であり、部長という自分自身の立場がそう思わせているのであろう…

 そして普段から自分自身に言い聞かせている事…
『決して周りには弱みを見せない、見せたくはない』
 と、いう思いからきているのだと思われるのだ。

 そしてこの不意な問題により、愉しみに、楽しみにしていた彼との逢瀬の思わぬキャンセルに心が弱っている様子を杉山くんに悟られたくはない…
 つまり、見栄、虚勢心からの思いなのだ。

 だが、今となっては杉山くんの誘いに乗りたい、いや、乗りたくなっていた、一緒に夕飯だけでも過ごしたい…

 ううん違う…

 過ごして貰いたい…のである。


「な、なんかさぁ、わたしをさぁ、夕飯に誘うなんてさぁ…」

 それは精一杯の虚勢心からの言葉であった…


「あ…、いや…」





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