テキストサイズ

シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 218 テールランプ

 この最後にタクシーチケットを手渡されたタイミングで、わたしの手を、指先を、握ってきても、そして口説いてきてもおかしくはない…
 いや、逆に、それが自然な流れではないのか。


 だが…

 案の定、杉山くんにはそんなことは出来ない、いや、思いもつかないのであろう。

 ま、だからこそ、こうして杉山くんには少しだけ悪いとは思っているのだが、からかい、愉しめ、そしてかわいく思っているのであるが…


「…………」


 杉山くん自身も、このわたしのさっきまでの攻撃の意味を必死に考え、探っているのだとは思うのだが…
 おそらく、どう反応をしてよいのか、行動すればよいのかさえ、思いも、考えもつかないのだとわたしには思われた。


「じゃあね、お盆休み明けにね」
 そしてわたしは、そう言って杉山くんをタクシーに乗せる。

「…あ、はい…」
 杉山くんは何かを必死に考え、探っている様ではあったのであるが、、わたしにそう言われ、やむなくタクシーに乗った。

「うん、じゃ、おやすみ」
 そしてわたしは、今夜は、この前の様なお別れの挨拶代わりの軽いキスはしなかった…
 敢えてしなかったのだ。

 そのキスは、今夜に限っては、さっきまでの攻撃のダメ押し的で、杉山くんには少し残酷な気がしたのである…

 そして杉山くんを乗せたタクシーは、ゆっくりと走り出していく。

 わたしはそんなタクシーのテールランプをボーっと見送りながら…

 やっぱり杉山くんは杉山くんだ…

 かわいい…のだけど…

 なんとなく…

 なんとなくだなぁ…

 それに…

 少し…

 いじり過ぎちゃったかなぁ…

 と、そう思いながら走り去るタクシーを見送った。








 の、だが…

 突然…

 タクシーのテールランプが赤く輝いたのだ…





ストーリーメニュー

TOPTOPへ