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シャイニーストッキング

第10章 絡まるストッキング9      美冴とゆかり

6 沈黙の意味

「なんかぁ、思ったよりも早く東京に着きそうねぇ…」

 わたし達は魚市場からの帰途中に、ハンバーグで有名なチェーン店で昼食を食べ、帰途方面の高速道路に乗った。
 すると、お盆休みという大型連休の中日でもあってなのか、予想以上に上り方面、つまり東京方面はガラガラであったのだ。

 ナビも、最終到着予想時刻が、走る毎にどんどん予定時刻を繰り上げてきていた。

「この分だと、都内も空いてそうね」
 そうわたしが呟くと、和哉は黙って頷いてくる。

 いや実は…
 わたし達は、ハンバーグレストランから出発してからは、このわたしの言葉まで、ずっと黙っていたのであった。

 決して機嫌が悪いとか、眠いからとか…ではない。

 そして会話が無い訳でも無いのだが…
 ただ、なんとなくお互いに黙っていた、いや、いるのであった。

 また、決して、この沈黙が重く、憂鬱とかでもなかったのだ…

 多分…

 もうわたし達の二人の関係が、新たな新展開に移行した、いや、するという事を、昨夜から朝方にかけての逢瀬により…
 わたしと和哉の、心と、そして、カラダで理解できたからであろうと思われたからである。

 わたしはこの突然の和哉との再会と、まるで運命的な流れでもあるのだろうか…
 と、いうような甥っ子と和哉の偶然の関係を含めて全てを呑み込む覚悟ができた。

 そして、おそらくなのだが、和哉自身も、わたしとの約五年間に及ぶ再会の熱望が見事に成就でき、そして昨夜のわたしとの逢瀬により、その五年間の想いの昇華が出来たのだろう…
 と、わたしには思われたのだ。

 更に今朝方に、わたしとの新たな関係の確信と確認、そして示唆が出来たので…
 もう今更、わたし達には無駄な会話が必要なくなったのである。

 わたしにはわたしのあの五年前とは全く違った人生、そして生き方があり…

 和哉には大学四年生という現実的な将来を見据える大切な生き方と、現在があり…

 そして今更、わたし達には…
 あの五年前の僅かな時間にいつまでまでも囚われ、縛られ、拘り続けている時間など無いし、無駄だという現実も強く分かっていたのである。

 だからもう、今の、帰途中のわたし達の間には、会話は必要最低限しか要らないのだ…

 

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