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シャイニーストッキング

第10章 絡まるストッキング9      美冴とゆかり

 153 午後2時38分 渋谷109前

 午後3時35分に待ち合わせ場所の
『渋谷109』デパートの前に到着した。

 まだ、美冴さんは来ていない。

 約束は午後3時だから、さすがにまだ着てはいないか…
 でも、わたしの方が先に着ていたかったからそれでよかったのだ。
 だがわたしは、美冴さんはあと少しで来るような気がしていたのである。

 それにしてもすごい人混みだわ…

 うわぁ、若い人ばっかり…

 渋谷にしたのは間違いだったかなぁ…

 そう思ってしまうくらいにこの109前は、いや、スクランブル交差点前付近は沢山の若者達で溢れていた。

 そしてわたしは日陰を求めて南側のビルの陰に入ろうと、やや道玄坂寄りに歩いていく。

「あっ…」
 するとわたしは沢山の人々の喧騒の中から、愛しい人の声を聴き、認識した。

 美冴さんだ…
 声の方向を見ると、やはり、美しい、そして愛しい彼女が爽やかな雰囲気でわたしを見ていたのだ。

 時刻は午後2時38分…
 わたしが到着した3分後である。

 ああ、やっぱり早く着たわ、いえ、着てくれた…

「美冴さん…」
 わたしがそう名前を呟くと…
「ゆかりさんこんにちは…」
 そう爽やかに、そしてにこやかに微笑みながら言ってきた。

 うわぁ、なんて爽やかなの…

 目の前の美冴さんは、薄い水色系のエレガントなエスニック調花柄のボヘミアンワンピースをゆったりと着て、茶系の編み上げの皮のサンダルを履き、微笑みながらわたしを見ていたのだ。

 爽やかで、落ち着いた雰囲気、そして素敵なサンダル…

 わたしはそんなシックで、ゆったりと、そして爽やかに涼しそうなファッションの美冴さんを思わず見惚れてしまう。

「あ、やだ、ゆかりさん、そんなに見ないでよ…」
 恥ずかしそうに言ってきた。

「あ、いや…」
 わたしはドキドキしていた。

「え、あ、うん、ほら、映画だから、映画館の中ってさぁ、エアコンきついじやない…
 だから、つい…」
 美冴さんは少し戸惑い気味にそう言ってくる。

 きっとわたしが見惚れてしまっていたのと、その編み上げの皮のサンダルをついボーッと見つめていたから、薄い、爪先スルーのストッキングを穿いている事に対して言い訳気味に、そう言ってきたのだと思われた…
 
「い、いや、そんな…」




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