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シャイニーストッキング

第10章 絡まるストッキング9      美冴とゆかり

 169 ダブって見えて…

 え…
 いつからだ?…
 わたしは、あの目が潤みがちに感じた辺りの記憶を辿っていく。

 あ…

 あれからだ…

 あの『料理を教えてあげるわ…』って言って、ゆかりさんが見せた事ないような満面に笑みを浮かべた後辺りからだわ…

 そうか…
 あれで彼を、大原浩一本部長の事を、思い浮かべて内心昂ぶったのかもしれない…

 それに、あの映画の刺激も相まっての昂ぶりであり、潤みであり…

 濡れた瞳なのかもしれない…

「だから、あの指先が絡んできた瞬間からは、もう、ドキドキがどんどんヤバくなっちゃっきてぇ…」
 そう顔も高揚気味に昂ぶってきてくる。

 そうか、そうなのか…

「ねぇゆかりさん、怒らないでね…」
 そして浮かんだ想いを問うてみたくなってきた。

「え、あ…、は、はい…」

「わたしもさぁ…
 あの映画を観ててさぁ…
 顔カタチなんかは全然似てはいないけどさぁ…
 なんとなくよ、なんとなく、あの男優さんが、大原本部長に見えてきちゃってさぁ…」
 途中からは完全に座るダブって見えちゃってさぁ、ドキドキしちゃってたのよねぇ…
 と、伝える。

「え…」
 
「うん、ホント、本当に見た目は全然違うしさぁ…
 映画ではさぁ、閑職に追いやられた元やり手編集者っていう設定で、本当の大原本部長は映画とは全く違うバリバリやり手でイケイケだけどさぁ…
 なんか、なんとなく、途中からはすっかり彼にダブって見えちゃってさぁ…」
 と、これは本当に、そう感じていたのだ。

「あ…」

 すると…

「あ、実は…
 わたしも…途中から…
 主人公の男優さんと彼の姿がダブって見えてきちゃってぇ…
 本当に、ドキドキしながら観てたんです…」
 そう恥ずかしそうに言ってきたのである。


「だからぁ、ホントに途中からは、あの濡れ場シーンがさぁ…
 わたしにはさぁ…
 まるで本当にゆかりさんと彼が愛し合っているかの様に見えちゃってたのよねぇ…」

「え…」

 だが、それは、嘘、ウソであった…

 本当に彼に被って、ダブって見えて、観えていたのだが…

 実は、この前の…
 あの『黒い女』からの覚醒時に抱かれたあの夜を…

 あの想いを…

 自ら想い浮かべてしまい、映画のシーンを自分に被らせて昂ぶり、疼いてしまっていたのであった。




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