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シャイニーストッキング

第4章 絡まるストッキング3 大原本部長と佐々木ゆかり部長

 3 無闇に敵は作らない

 タクシーは本社に到着した。
 そして私とゆかり部長は人事部へと向かう。
 この人事部の部長も、いや、課長も山崎専務派であり、つまりは私同様、同じ副社長派閥の山崎専務派といえるのである。

「ああ大原くん、あ、いや、本部長か…久しぶりだね…」
 と、人事部部長の鈴木さんがそう言ってきた。
 鈴木人事部部長は私より5個先輩であるが、私が山崎専務によりゴボウ抜きの出世をしたので内心は穏やかでない面々の一人であったのだ。

「おや、彼女が佐々木ゆかり新部長か…」

「初めまして、佐々木ゆかりです…」

「うん、鈴木だ、よろしく頼むよ」
 その言い方にはなんとなく微妙に嫌味が感じられたのである。
 そうなのだ、いくら山崎専務の画策とはいえ異例のスピード出世なのである、しかも彼女の若さで自身と同等の部長なのだ、嫌味がない筈がないのだ。
 しかも今度の『新規業務案件』により山崎専務の画策だけではなく、本当の実力的な出世を周りに知らしめてしまったのである、嫌味の一つがない方がおかしい位なのであった。

 だから私は内心愉快で仕方がなかったのだ…

 そんな見えないお互いの微妙な心理のやり取りをしながら、『新規業務プロジェクト計画』のメンバーのリストを提出し、稟議の印を貰う。

「なかなかのメンバーが集まりましたね…」
「はい、山崎専務のゴリ押しもありますから…」
 私は鈴木人事部部長に牽制をしながらそう応える。

「あっ、そうだ、この前から山崎専務から言われてるんだが、今度向こうの執行役員になるわけだから、秘書が…」
 秘書を用意する事になる…
 と、言ってきたのである。

 その話しは聞いてはいなかった…
 
「そうなんですか…」
「こっちで用意するか、そっちで選ぶか、お盆休み明けにでも連絡くれるかな…」 
 本来なら私の方が既に立場的には上なのであるが、鈴木人事部部長のプライドなのであろう、あくまでも先輩としての上からの物言いを続けてきていたのである。

「はい、わかりました、お盆休み明けにでも連絡しますね」
 私自身もあくまでも後輩としての受け応えをする。
 居丈高な態度は上の人には取らない。
 これでいいのである、無闇に敵は作らない事が肝心なのだ。

「ホント、あの言い方ムカついたわ…」
 人事部を出るとすかさずゆかりがそう言ってきた。



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